収益認識基準ってどういうもの?
収益認識基準とは?
2021年4月から適用が開始され収益認識基準とは、売上をいつ、いくら計上するのかを定めた新しい会計ルールです。
これまでの日本では、企業会計原則に「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」と記載されているのみで、収益認識に関する包括的な基準はなく、ルールがほとんどない状態でした。
一方で、世界では、収益認識に関する基準を国際的な会計基準であるIFRS(国際財務報告基準)とUSGAAP(米国会計基準)で統一する動きがあり、これを受けて日本でも新たなルールとして収益認識基準が設けられる運びとなったのです。
収益認識基準の適用対象となる企業
収益認識基準はすべての企業に適用されますが、中小企業においては任意適用となり、これまで通りの会計処理も可能となっています。強制適用となるのは会社法第2条6に分類される大会社で、以下の要件を満たす企業を指します。
- 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上
- 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上
ただし、会社法が定める大会社に該当しない場合でも、上場(予定)の有無によって強制適用の対象となる場合があります。
- 上場会社:適用対象(※子会社・関連会社を含む)
- 上場準備会社:適用対象(※子会社・関連会社を含む)
- 上場予定のない会社:任意適用
上記の要件に該当する企業の経営者や経理担当者は、収益認識の基本原則に沿った売上計上の処理について把握しておく必要があります。
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収益認識基準でおさえておくべき5つのステップ
2021年4月から適用が開始された収益認識基準では、売上をどのタイミングでいくら計上するのかについて5段階のステップが定められています。
ステップ1:契約の識別
顧客との契約で、どのような商品やサービスを売買する取り決めになったのかを把握します。
ステップ2:履行義務の識別
履行義務とは、大まかに言えば顧客との契約で定めたサービスまたは財を顧客に移転する約束のことです。収益認識基準で定められた履行義務の識別では、顧客との契約のなかに約束がいくつあるかを把握しなければいけません。たとえば家電量販店でパソコンを購入し、5年間の保証サービスを付けた場合、製品本体と保証サービスの2つの履行義務が発生します。
ステップ3:取引価格の算定
取引価格とは、顧客との契約で約束した商品またはサービスを提供した際に、企業に対価として受け取りが見込まれる金額のこと。取引価格の算定では、契約において取引価格がいくらなのかを把握する必要があります。
ステップ4:履行義務への取引価格への配分
履行義務への取引価格への配分とは、顧客に提供する商品またはサービスが複数ある場合、識別した履行義務ごとに算定した取引価格を配分しましょう、というものです。ステップ2の説明であげたパソコンと保証サービスの例だと、製品本体の価格と保証サービスの価格をそれぞれの履行義務に配分します。
ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
履行義務の充足による収益の認識とは、売上をいつ計上するかのタイミングを決めることです。売上を計上するパターンとしては大きく分けて「一時点で収益として認識する」「一定期間で徐々に収益として認識する」の2つ。パソコンと保証サービスの例をまたあげると、パソコンは商品を引き渡した段階で履行義務を充足しているので、取引価格の全額を売上として計上できる一時点での収益認識になります。
一方で5年間の保証サービスは履行義務の充足に5年かかるため、取引価格を1年ごとに分割して均等に計上しなければいけません。このように一定期間で徐々に収益認識される例としては、ほかにも定期的な清掃サービスや顧客が所有する土地での建築工事、ソフトウェア開発などが該当します。
収益認識基準の適用で大きな影響を受ける例
企業によっては収益認識基準の適用によって計上できる売上が減ったり、収益の管理にかなりの手間がかかったりする場合があります。業務やシステムに大きな影響が及ぶ可能性のある例は次の通りです。
例1:製品とサービスをセットで販売している場合
パソコンと保証サービスのように製品とサービスをセットで販売している場合、収益認識基準の適用後はサービスは分けて計上する必要があります。そのため、これまでのように販売価格の全額を売上として計上することはできません。パソコンと5年間保証サービスの例で言うと、1年目に計上できるのはパソコンの本体価格と1年分に換算した保証サービスの価格です。
つまり、販売価格をすべて売上として計上できるのは保証サービスの履行義務が充足した5年目となり、1年目の売上は今までより減ることになります。
例2:ポイント制度を設けている場合
製品やサービスの購入金額に応じてポイントを付与するサービスを設けている場合、付与したポイントはサービスの提供と同等のものとみなされます。それにより、これまではポイント引当金として負債計上していたものが、収益認識基準の適用によって未使用分のポイントの価値を製品の販売価格から控除しなければいけなくなりました。
たとえば10万円のパソコンに100ポイントを付与して販売した場合、販売した時点で売上として計上できるのはパソコンの販売価格からポイント価値を差し引いた価格になります。ポイントに関する売上を計上できるのは、顧客が実際に100ポイント分をすべて使用した時点です。
個人単位でのポイントを管理しなければならず、さらにポイントのなかには失効するものもあるため、複雑な処理が必要になります。また、付与したポイントが他社でも使えるような共通ポイントだとさらに複雑な処理が求められるので、システムも含めた対策や見直しの検討が必要です。
収益認識基準に対応する際のポイント
収益認識基準を適用する際に、対応の進め方の例を紹介します。
1.現状の契約やシステムの確認
まずは自社に現状どのような契約があり、それぞれの履行義務の内容はどうなっているのかを正確に把握しましょう。システムを導入しているのであれば、システムの仕様が収益認識基準に耐えられるのか、もしくは適応のために機能を追加する必要があるのかを検討します。
2.契約ごとに方針を検討する
収益認識基準では契約ごとに適切なタイミングで売上計上を行なわなければいけないため、現状の業務フローに問題があれば見直しの検討が必要です。また、現状のシステムでの管理が難しければ、対応可能なシステムの選定や変更も必要になります。
3.決定した方針を実行する
契約ごとに決定した方針を実行するための準備を行ないます。たとえば業務フローに変更があれば相応の人員を確保し、新しいシステムを導入するのであれば開発側と協力しながらプロジェクト体制を組んで対応するのも良いでしょう。旧システムと並行稼働したうえで完全移行することが多いため、スケジュールを前もって調整して移行期間を確保しておく必要があります。
4.運用後の確認
収益認識基準を適用して、新しい業務フローや新しいシステムが本稼働した後も適切な対応がされているかを確認する必要があります。たとえば月次処理や四半期決算、年次決算において適切な売上計上がされているか、計上された売上額が正しいのかを確認し、問題があれば業務フローやシステムの見直しを再度行ないましょう。
収益認識基準の悩みは経理代行サービスで解決
収益認識基準の強制適用となる企業は、これまでの売上計上とは異なる複雑な経理処理を求められます。また、適用に伴って業務フローの見直しや人員の確保、システムの導入による移行期間などが必要となり、円滑な運用までに時間やコストが発生する課題とも向き合わなければいけません。
収益認識基準に対応している経理代行サービスであれば、業務フローの見直しや人員の確保、システムの導入による移行期間などの悩みを解決することができます。そのため、経理代行サービスを利用するのも、収益認識基準の適用にあたって企業が取れる対策の1つです。
経理代行といっても代行会社によって対応範囲は様々です。
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